玉川堂の鎚起銅器は、一枚の銅板を金鎚などで叩き、立体的な器へと仕上げる手仕事です。形を作るだけでなく、途中で銅の柔らかさを戻す工程や、表面に色を生む工程を重ねます。銅なのに銀色や紫を帯びて見える器にも、素材の扱い方の工夫があります。

BS日テレ『冨永愛の伝統to未来 第二章』では、2026年11月4日(水)22:00から、玉川堂を訪れる「鎚起銅器②」を放送予定です。この記事では、器の形と色が生まれる過程、実物を見るときの注目点をまとめます。

玉川堂の鎚起銅器は、一枚の銅板から始まる

「鎚起」は、金鎚で打ち起こす仕事

「鎚起銅器」は「ついきどうき」と読みます。玉川堂は、新潟県燕市で1816年に創業し、鎚起銅器を作り続けている工房です。

材料となる平らな銅板を、叩きながら器の形に変えていきます。完成品だけを見ると想像しにくいですが、平面から立体へ移るところに、鎚起の技術が表れています。

縁を起こし、口を縮めて深さを作る

玉川堂の鎚起銅器の製作工程では、まず銅板の縁を起こし、皿のような形にする「打ち起こし」があります。その後、金鎚で叩きながら口の部分を徐々に縮める「打ち絞り」で、形を整えます。

平らな板をただ薄く伸ばすのではなく、叩き縮めながら立体の器へ仕上げることが、鎚起銅器の特徴です。できるしわを重ねないように扱い、必要な形へ近づけていくところに、職人の判断が必要になります。

金鎚・鳥口・焼きなましには、それぞれ役割がある

鳥口は、器の形を支える鉄の道具

「鳥口(とりくち)」は、成形するときの土台となる鉄棒です。木の台に固定し、銅板を当てて使います。先端の形や大きさが異なり、作る部分に合わせて道具を選びます。

金鎚も一種類ではありません。形を作るときと表面を整えるときでは、必要な働きが違います。器の丸みや表面の跡を見比べると、道具を使い分ける意味を考えやすくなります。

叩いて硬くなった銅を、また加工しやすくする

銅は叩き続けると硬くなります。そのため製作の途中で熱を加え、柔らかさを戻す「焼きなまし」を挟みます。叩く工程と焼きなましを組み合わせることで、形づくりを進められます。

ここでの目的は、銅をさらに硬くすることではありません。金属の熱処理は材料や目的で働きが異なるため、鋼の焼き入れと同じものとして考えないほうが分かりやすくなります。

工程・道具主な役割
打ち起こし・打ち絞り銅板の縁や口の形を変え、立体にする
金鎚と鳥口叩く側と支える側を組み合わせ、形を整える
焼きなまし加工で硬くなった銅の柔らかさを戻す
仕上げ均し成形後の表面を整える

工程の回数や使う道具は、製品によって異なります。一つの製品の例を、すべての器に共通する作り方と考えず、目的と役割を押さえると理解が深まります。

銅の器に、多彩な色が生まれる理由

表面に錫を使い、色調を変える

玉川堂の色は、表面に施す処理によって生まれます。例えば銀色は、銅の表面に錫を焼き付ける方法によるものです。銀色に見えても、器全体が銀でできているという意味ではありません。

「紫金色(しきんしょく)」は、表面に錫を焼き付け、その後の液処理を組み合わせる技法です。また、一枚の銅板の中でも錫を施す部分を変えることで、色を分ける「配合金」という技法があります。

色名と、使い続けた変化にも注目する

玉川堂の銅器の色彩の解説では、宣徳色・紫金色・配合金・銀色・素銅色などを見比べられます。同じ銅の器でも、表面の処理によって印象が変わります。

形を作る仕事と、表面の色を生む仕事を分けて見ると、銅器の多彩さが分かります。宣徳色や素銅色には、使い込むことで色調が深まるという特徴もあります。ただし、すべての色が同じように変わるわけではないので、手入れは製品に合った方法を確認しましょう。

実物を見るなら、燕本店の見学条件を確認する

燕本店と東京の店舗では、利用の目的が異なる

公式の店舗案内には、燕本店に加え、東京都内の銀座店と西麻布の「笄 KOGAI」があります。製品を手に取る目的と、作っている現場を見る目的を分けて、行き先を選ぶとよさそうです。

燕本店の所在地は、新潟県燕市中央通り2丁目2-21です。店舗の通常営業時間は8:30~17:30、定休日は日曜・祝日です。他店では営業時間や定休日が異なります。

工場見学は、予約優先・人数による条件付き

燕本店の工場見学は予約優先です。通常の案内開始は10:00、11:00、13:00、14:00、15:10で、所要時間は約15~20分となっています。店舗営業時間の間なら、いつでも見学できるという仕組みではありません。

通常の1~5名の見学は無料ですが、6名以上や旅行会社を通じた見学、企業・団体の視察などは有料となる条件があります。訪問前に燕本店の工場見学の予約・料金条件を確認し、必要に応じて相談しましょう。

工場は日曜・祝日、年末年始、その他の工場休業日は休みで、土曜日は作業する職人が少なめです。営業や受け付けは変わることがあるため、最新案内を確認し、見学中はスタッフの指示に従ってください。

まとめ

玉川堂の鎚起銅器は、銅板を叩いて立体にし、途中で加工しやすい状態を戻し、表面に色を生む仕事を重ねた器です。形と色の役割を分けると、完成品から職人の工程を想像しやすくなります。

私は、同じ銅という素材から、多様な形や色が生まれるところに手仕事の面白さを感じます。実物を見る機会には、器の丸みや表面の跡、色の違いを見比べてみてはいかがでしょうか。工場を訪ねる場合は、見学の予約条件も確認しておきましょう。