奇妙な形の岩が連なるマトボの丘群は、自然の造形が印象的な場所です。それでも世界遺産として評価されているのは、岩の形だけではありません。岩絵や人々の暮らし、現在も続く信仰が、この景観と深く結びついているからです。

TBS系『世界遺産』では、2026年11月1日(日)18:00からマトボの丘群を取り上げる予定です。ここでは「なぜ文化遺産なのか」という疑問から、岩と人の関係を見ていきます。

マトボの丘群は、岩と人の営みを伝える場所

ジンバブエ南西部に広がる花崗岩の景観

マトボの丘群は、ジンバブエ南西部、ブラワヨの南方にあります。花崗岩の丘と谷、巨石が広がる地域で、岩陰には人が身を寄せられる空間も生まれています。

岩の一部が張り出して、自然の屋根のようになった場所をロックシェルターと呼びます。建物を一から造らなくても雨や日差しを避けられる岩陰は、人々の活動と結びつく場所でした。

自然の形と文化的な価値は両立する

マトボの丘群は2003年に世界遺産へ登録されました。UNESCOが示す登録価値では、岩絵、地域社会と景観の関係、信仰との結びつきが重要な位置を占めています。

マトボの丘群は、岩だけを切り離すのではなく、人々が岩と関わってきた歴史まで含めて見る場所です。自然の景色が目立つことと、文化遺産としての価値があることは、矛盾しないのです。

岩絵には何が描かれている?

人や動物が、岩陰に残されている

大英博物館のアフリカ岩絵資料では、マトボの岩絵には人物や動物、幾何学的な模様があると説明しています。人物が物を持つ姿や、人と動物を組み合わせた場面など、表現もさまざまです。

動物ではクーズーなどのアンテロープが多く、キリン、シマウマなども描かれています。同じ「動物の絵」でも、種類や姿勢、人物との配置を見ると、作品ごとの違いに気づけます。

絵の意味を、見た目だけで決めない

岩絵は、人々の生活や想像、精神世界を考える手がかりです。ただ、動物が描かれているから食事の記録、人物が並んでいるから祭りの場面、と一律に読み取れるわけではありません。

例えば、描かれた対象を確かめることと、それを描いた人の意図を説明することは別です。まず見える形を押さえ、解釈には研究の根拠が必要だと考えると、岩絵の見方が丁寧になります。

岩絵の古さは、どうやって調べる?

壁の絵だけでなく、地面に残る資料も調べる

フランスとジンバブエの共同研究MATOBARTは、岩絵の記録や洞窟の発掘を通して、この地域の文化を調べてきました。対象のポモングウェ洞窟とバンバタ洞窟には、道具、動物の骨、種子、木炭などが残っています。

さらに、壁から落ちた彩色片や、顔料を処理する道具も見つかっています。壁に残った絵と地面の資料を合わせて考えることで、絵を描く活動と暮らしのつながりを探るのです。

地域の歴史と、一枚の絵の年代は分ける

MATOBARTの研究概要では、岩絵の出現時期や変化を確かめること自体が研究課題です。古い人の活動が確認できることと、すべての岩絵が同じ時期に描かれたことは、同じ意味ではありません。

地域の長い歴史と、一枚一枚の岩絵の年代を分けると、古さを必要以上に断定せずに理解できます。「いつ描かれたのか」に加えて、「何を根拠にそう考えるのか」にも目を向けたいところです。

現在の祈りや保全も、景観の一部

過去の遺跡で終わらない理由

UNESCOの説明では、マトボの岩々は、今も地域社会の信仰や聖なる場所と結びついています。岩絵が過去を伝える一方で、現在の人々もその場所との関係を保っているのです。

見方を分けるなら、岩は人が活動する環境、岩絵はその営みの痕跡、信仰は現在にも続く関わりです。この三つをつなげると、文化的な景観という考え方が見えてきます。

岩絵と、それが残る場所を一緒に守る

岩絵は額に入った絵画とは違い、描かれた岩や周囲の環境と一体になっています。絵の部分だけを見るのではなく、どんな岩陰にあり、周りにどのような空間があるかも大切な情報です。

自然の風化に加え、訪問者による損傷も保全の課題です。現地では管理者の立入条件や撮影の案内に従い、岩絵に触れたり、地域の祈りの場へ無断で入ったりしないようにしましょう。

まとめ

マトボの丘群の文化的な価値は、奇岩の景観に、岩絵や人々の営み、信仰が重なっている点にあります。岩絵の年代や意味は、資料と研究の根拠を分けて考えることが大切です。

不思議な岩の姿から人の歴史へ関心が広がるところに、この場所の魅力を感じます。写真や解説を見るときも、岩の形、絵の表現、場所との関わりを順にたどると、景観がより豊かに見えてきそうですね。