住友林業は、住宅だけでなく中大規模の木造建築に向けた技術開発にも取り組んでいます。木造ビルを理解する鍵は、地震の力に対応する構造と、火災から柱や梁の内部を守る部材を分けて考えることにありそうです。

テレビ東京系『知られざるガリバー』では、2026年10月17日(土)18:00~18:30に、住友林業の木の可能性を追求する取り組みを紹介する予定です。この記事では、企業の公式資料をもとに、番組で取り上げる木造化の技術のうち、耐震と耐火の仕組みを詳しく見ていきます。

住友林業が取り組む中大規模の木造建築

木造建築と聞くと、戸建て住宅を思い浮かべる方も多いかもしれません。しかし、住友林業の研究対象には、規模の大きな建築で必要となる構造、防耐火、音や振動の技術も含まれています。

木材だけで性能を確保するわけではない

同社の中大規模木造建築の構造・防耐火研究では、鋼棒を使う耐震技術や、木材を耐火被覆に用いる部材の開発を行っています。木造だからといって、金属や不燃材を使わずに建てるという意味ではありません。

耐震は、地震による力を受けたときの建物の挙動に関わります。一方、耐火は、火災の熱を受けても構造を支える部分の性能を保つことに関わります。どちらも建物に必要な性能ですが、取り組む課題は異なります。

ポストテンション耐震技術は、鋼棒の張力を利用する

部材を締め上げ、変形への抵抗と復元力を高める

住友林業のポストテンション耐震技術は、壁柱や梁などに鋼棒を通して締め上げ、木質構造の剛性と復元力を高める技術です。ここでいう張力は、引っ張る方向に働く力を指します。

部材同士を締め付ける力をあらかじめ与えることで、地震時の水平方向の力に抵抗する仕組みです。剛性は変形しにくさ、復元力は変形した後に元の状態へ戻ろうとする力、と考えると違いをイメージしやすくなります。

エネルギーを吸収する部材も組み合わせる

鋼棒の働きに加え、同社の技術では柱脚の金物などでもエネルギーを吸収します。柱脚とは柱の下端部分で、地震時に力が伝わる重要な場所です。

元へ戻ろうとする働きと、揺れのエネルギーを吸収する働きを組み合わせる点が特徴です。企業の資料では、想定以上の力によって金物が損傷した場合、その金物を交換して性能を回復させる考え方も示されています。

交換できることと、点検が不要であることは別

これは、被害を受けた後の復旧まで考えた設計上の工夫です。ただし、実際の建物でどの部分を交換するか、再使用できるかは、損傷の状況や専門家による点検・判断が必要となります。地震後も確認せず使い続けられるという意味ではありません。

「木ぐるみCT」は、荷重を支える木材を周囲から守る

構造を支える部分と、その外側の被覆を分ける

木ぐるみCTは、住友林業が開発した木質耐火部材です。木ぐるみCTの部材構成と耐火認定の説明では、柱や梁の周囲に不燃材を配置し、その外側にCLTなどの木材を、間を空けて留め付ける構成となっています。

柱や梁は、床や屋根などの重さを支える部分です。建物の荷重を支える内部と、外側で熱から守る部分を分けることで、木の見える空間と耐火性能の両立を目指しています。

CLTは、板の向きを交差させて重ねた木質材料

CLTは「直交集成板」と呼ばれる材料です。板を並べた層を、木の繊維方向が直角に交わるように重ねて接着したもので、木ぐるみCTでは外側の被覆に使う材料の一つとなっています。

外側に木材が見えていても、その内部の構成まで同じとは限りません。表面の見た目だけでなく、どの材料をどこに配置しているかを見ることが、耐火部材を理解するポイントです。

「3時間耐火」は、建物全体の安全を保証する言葉ではない

住友林業は、2021年に木ぐるみCTの柱・梁について3時間耐火構造の国土交通大臣認定を取得したと発表しました。研究所の現在の技術紹介でも、3時間耐火構造部材の開発に触れています。

ただし、「木が一切燃えない」「どんな火災でも3時間安全」という意味ではありません。部材の認定された仕様と、実際の建物全体の防火計画は区別して読むことが大切です。

10階建ての試験体でも、揺れ方と損傷を検証

住友林業は、2023年11月の発表で、米国の10階建て木造試験体を独自のポストテンション仕様に改修し、日本の耐震基準に基づく検証を行ったと報告しています。試験体は計51回加振されました。

揺れを受けた後、構造がどう戻るかを見る

同社の報告では、各加振の終了時に構造躯体が復元力で直立状態に戻り、全加振後も木材を含む構造躯体に損傷はなかったとされています。ダンパーが振動エネルギーの多くを吸収したことも報告されています。

ここでいうダンパーは、揺れのエネルギーを吸収する部材です。鋼棒の張力だけでなく、こうした部材を含めた構造全体の働きを、実物大の試験体で確かめた事例となっています。

実験結果は、試験した条件と一緒に読む

この結果は、特定の試験体と加振条件についての報告です。あらゆる木造ビルや住宅が同じ結果になると受け取らず、建物の規模、部材の構成、試験内容を合わせて確認しましょう。

まとめ

住友林業の木造ビル技術では、鋼棒の張力とエネルギーを吸収する部材による耐震、荷重を支える内部を守る耐火被覆、実物大の検証がそれぞれ役割を担っています。木を使うことと、必要な性能を技術で確かめることが一緒に進められている点が特徴です。

木の温かみを生かすだけでなく、構造や復旧まで考えて用途を広げる研究は、興味深いですね。今後木造ビルの話題に触れた際は、使われている材料の名前だけでなく、どの部分がどんな役割を担うのかにも注目してみてください。