鉄スクラップが厚板になるまで|中部鋼鈑の電気炉と再生の工程
中部鋼鈑は、鉄スクラップを原料に、厚みのある板状の鋼材「厚板」をつくるメーカーです。特徴は、電気炉で鉄を溶かすだけでなく、成分を整え、形をつくり、注文に合う寸法へ仕上げる工程を重ねていることにあります。
テレビ東京『知られざるガリバー』の中部鋼鈑を取り上げる放送予告では、2026年10月24日(土)18:00〜18:30に同社のものづくりを紹介する予定です。この記事では、鉄スクラップが厚板になるまでの工程を、用語の意味とともに見ていきます。
中部鋼鈑の厚板は、機械づくりを支える材料
完成品ではなく、製品の土台になる鋼材
厚板は、厚みのある板状の鋼材です。中部鋼鈑の製品は、フォークリフトや建設機械などにも使われます。
普段は完成した機械に目が向きますが、その部材をつくる前段階に、鋼板を製造する仕事があります。何の機械に使うかによって必要な寸法や性質が変わるため、鉄を板にすればそれでよい、というわけではありません。
鉄スクラップを再び材料として使う
中部鋼鈑は、鉄スクラップを電気炉で溶かし、鋼材へ再生しています。使い終わった鉄などを、次の製品の材料へつなぐ仕組みです。
ここで注目したいのは、リサイクルと品質づくりが別々の仕事ではないことです。原料を再利用しながら、用途に必要な性質を持つ材料に整えていく点に、製造技術の役割があります。
電気炉で溶かした鉄は、どう鋼片になる?
溶解は、電気の熱で鉄を溶かす工程
中部鋼鈑の電気炉から鋼片までの製鋼工程では、200トン電気炉を使います。鉄を溶かす熱源は、アークと呼ばれる放電です。
アークは、電気が放電するときに生じる強い熱を利用する仕組みです。同社は溶解時の排熱を原料の予熱にも使い、省エネルギーと生産性の両立を図っています。
精錬は、不純物と成分を調整する工程
溶けた鉄は「溶鋼」と呼ばれます。精錬では、取鍋精錬炉という設備で不純物を除き、成分を調整します。
溶かすことと、用途に合う材料へ整えることは、役割が違います。料理で例えるなら、材料を加熱する工程と味を調整する工程を分けて考えるように、鋼材づくりでも段階ごとに目的があります。
連続鋳造で「スラブ」という半製品へ
成分を整えた溶鋼は、水で冷やして固め、所定の大きさに切断します。この段階の半製品が、スラブと呼ばれる鋼片です。
鋳造は、溶けた金属を固めて形をつくる工程です。スラブは最終的な厚板そのものではなく、次の工程で延ばして仕上げるための材料となります。
圧延と切断で、注文に合う厚板へ仕上げる
圧延は、熱した鋼片をローラーで延ばすこと
中部鋼鈑はスラブを加熱炉で熱し、圧延機で注文に合う厚さ・幅・長さへ延ばします。圧延は、金属に圧力をかけて形や寸法を整える加工です。
同社は、圧延する際の温度や力も制御し、鋼板の強度を調整しています。見た目の寸法だけでなく、材料としての性質にも関わる工程なのですね。
平らに整え、必要な大きさに切る
圧延された鋼板は、冷却しながら平らに整えます。さらに精整工程では、極厚製品や定尺製品などを切断加工します。
一連の工程を役割ごとに分けると、違いがつかみやすくなります。次の表は、公式の工程説明を基に、読者が流れを追いやすいようにまとめたものです。
| 工程 | 主に行うこと | 次の工程につながる役割 |
|---|---|---|
| 溶解 | 電気炉で鉄スクラップを溶かす | 成分を調整できる溶鋼にする |
| 精錬 | 不純物を除き、成分を整える | 用途に合う材料をつくる |
| 連続鋳造 | 冷やして固め、鋼片にする | 板へ延ばす前の半製品にする |
| 圧延・矯正 | 寸法や強度を調整し、平らにする | 注文に合う厚板へ近づける |
| 精整 | 必要な寸法へ切断加工する | 使用する側が求める形へ仕上げる |
多品種・小ロットは、使う側の注文に応える考え方
「多品種」は種類が多いこと、「小ロット」は一度につくる数量が小さいことを意味します。中部鋼鈑は、多様な注文に対応する多品種・小ロット・短納期の生産を特徴としています。
必要な鋼板は、使う機械や部品によって異なります。原料を溶かす段階から切断までをつなげて見ると、用途ごとの違いに対応するために、それぞれの工程があることが分かります。
「すみれす」は、製造時の環境負荷にも目を向けた鋼材
原料の再利用と、使う電力の見直し
中部鋼鈑の環境配慮型電気炉鋼材「すみれす」の仕組みでは、再生可能エネルギーの環境価値を製造プロセスに活用し、電力に由来するCO₂の削減に取り組んでいます。
鉄を繰り返し使うことに加え、製造に必要なエネルギーをどう調達し、その環境価値をどう扱うかにも目を向けた取り組みです。
排出量は、何を測った数値なのかも大切
同社は、製品1トン当たりのCO₂排出量を示すカーボンフットプリント(CFP)について、第三者による検証と、製品にひも付いた証明書の発行を行っています。
環境への配慮を知るときは、「排出が少ない」という言葉だけでなく、対象とする工程や計算の条件を見ることも大切です。すべての工程で物理的な排出が一切ない、という意味に広げないようにしましょう。
まとめ
中部鋼鈑の厚板づくりは、鉄スクラップを溶かし、成分を整え、固めてから延ばし、必要な寸法へ仕上げる仕事です。工程を分けて見ると、資源の再利用と、機械に使える材料をつくる技術がつながっていることが分かります。
私は、使い終わった鉄が新しい機械を支える材料へ変わる、その間の工夫に面白さを感じます。身近な建設機械などを見るときにも、完成品だけでなく、材料をつくる仕事へ目を向けてみると、新しい発見がありそうですね。




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